猫の赤ちゃんはとっても可愛いですよね。フワフワな毛に潤んだ瞳。猫は年間で何匹も赤ちゃんを産みます。自宅の猫が子猫を産んだ、友人にあげた、そういったご経験がある方もいるでしょう。しかし日本で生まれる子猫たちの中でも数えきれない猫が殺処分になっていることも、悲しい現状です。
どうして猫の殺処分が話題になってしまうのでしょうか?なぜ殺処分が行われているのでしょうか?それは、猫の妊娠出産のペースが人間よりも早く、個体の繁殖数が多いことも理由に挙げられます。猫の妊娠出産や、それに伴う手術などについて見ていきましょう。
(参照元情報:アルヒ動物病院、みむら動物病院、わっふる動物病院、相模原プリモ動物医療センター、アニファ動物病院、かず動物病院、エルザ動物病院、2017年5月現時点情報。医療に関する判断は必ず専門の医師の判断を仰ぐようにしてください。)
猫の妊娠出産について知っておいて欲しいポイント4つ
1.猫が妊娠するまで
生後4~5か月過ぎくらいから、体重が2.5キロほどになると発情し始めます。それから一年中発情期があると言っても過言ではないのです。昔は年が明けて日差しが春らしくなり始めた2月ごろから暖かくなる時期にかけて発情する猫が多く、これは太陽の日照時間と関係していました。しかし現代では、室内外問わず明るい環境が多く、年中発情期を見せるようになりました。メスの発情した様子に対して、それを見たオスが発情します。
猫のメスは犬とは違い「交尾排卵」という仕組みを持ちます。これは発情期に卵胞が発育しても、交尾をしたときだけに排卵をすることです。そのために、妊娠する確率が90~100%ととても高い確率で妊娠し、確実に子孫を残す能力が発達しているのです。
発情期の間に何匹ものオスと交尾をすることもあり、お父さんが皆違うという状況もあるのです。そのことを、「同期複妊娠」と呼ばれます。
オスの発情は、メスが発情したときに反応し、あの独特な鳴き声やマーキングなどをします。
2.妊娠した?妊娠中の猫に見られる様子や予兆
人間が妊娠した時のように、猫も食欲が落ちたり、嘔吐したりします。いつものキャットフードを食べなくなるくらい好みが変わったり、乳房から乳が出るようになり、頻繁に舐めるようになります。
飼い主にも攻撃的になったり、物音に対してもいつもより警戒心が強くなることもあります。
3.妊娠の確認にエコー検査もできる
人間が妊娠した時には妊娠検査薬を使用し、妊娠反応が出たら定期的に病院で検査してもらいますよね。猫用の妊娠検査薬は存在しません。人間用の検査薬は猫の尿では反応しないので使用することはできません。
猫は直接、動物病院で獣医師に超音波検査(エコー)をしてもらい、妊娠初期から胎児の心拍を確認することが出来ます。この時点では何匹の赤ちゃんがお腹にいるかは正確にはわかりません。
妊娠後期40日以降からはレントゲン検査をすることができます。何匹の赤ちゃんがお腹にいるかを確認できます。
4.妊娠期間について
人間は10か月ですが、猫はなんとたった63~67日間、およそ2か月の妊娠期間になります。2か月で赤ちゃんが生まれるなんてすごいですよね。飼い主が妊娠に気付くようになるのは、20~30日前後くらいでしょう。
生後4~5か月くらいから妊娠をするようになり、だいたい7~12才くらいまでは妊娠することが可能なようです。個体差に寄りますので、一概にはいえません。高齢になると、出産リスクが高まるため流産、死産の確率も上がります。
どうしよう?猫が妊娠したらどうやってあげたらいい?
1.妊娠した猫はこんな様子を見せる
妊娠初期は、20日以降になるといつもと様子が違うことに気付くようになります。普段の乳首の色は小さいためあまり気づかないですが、乳首の色がピンクや赤色に変わり、大きく膨らんできます。
30日以降は、お腹も膨らんできます。45日以降は、いつもより食べるようになり、その分体重がグンと増えます。
50日以降は、かなりおなかが膨らんだのがわかり、赤ちゃんの動きも触って感じることができます。
2.妊娠1ヶ月程度から食事の摂取量に気をつける
妊娠初期は、気分が悪くなり嘔吐したりと、食欲が落ちますが、30日~45日以降になると体調が落ち着くので、食欲が上昇します。
赤ちゃんを産むと母乳を与えなくてはいけないので、妊娠中に栄養を付けておかなければなりませんね。
エネルギー・たんぱく質・タウリン・脂肪・カルシウム・リンなどの栄養素が含まれているキャットフードを選んであげましょう。
3.出産前に準備してあげるものや場所
妊娠50日以降からはいつ生まれても良いように、猫が安心するような、暗くて静かな乾燥している場所を確保してください。段ボールに新聞や毛布、タオルなどを敷き、猫の臭いをつけておくと良いですね。
猫の出産は人間が手助けをしないほうが、猫が育児放棄をしてしまうのを防ぐ面でも後々良いのですが、陣痛が始まっても一時間以上赤ちゃんが生まれない場合は、苦しそうにハァハァし始め、落ち着きがなくなって歩き回ったり、股間をしきりに舐めたりします。難産の可能性が高いため、獣医師に指示を仰ぐと良いでしょう。
母猫が育児放棄し、やむ負えなく飼い主が出産を手伝う場合は、清潔なハサミと太めの糸でへその緒を処理します。お湯を張った洗面器で赤ちゃんを洗い、タオルで優しく包みます。
普通は、1~4時間程度で、3~5匹ほど産みます。
猫は子猫が離乳してからすぐにでも妊娠でき、多いと1年に4回も妊娠出産する猫もいます。この回復力の早さから、猫は多くの子猫を設けるために殺処分も問題になってしまうのでしょう。
望まない妊娠をしないための手術
1.メスの避妊手術
子猫だけでなく、猫は殺処分の割合も高いため、避妊手術をして、赤ちゃんを産むことを望まないようにするのも一つの手段です。その他には、乳がん・子宮内膜症・卵胞嚢腫などの病気を防ぐためや、発情期のあの独特な鳴き声を抑えるためにも避妊手術が行われます。
生後6~8か月ほどになると動物病院で避妊手術を受けることができます。全身麻酔の手術ですので、1日~2日程度の入院になります。子宮と卵巣を取り除きます。
費用は各々の動物病院でも変わってきますが、2~4万円ほどの金額でしょう。
2.オスの去勢手術
精巣腫瘍・前立腺肥大・エイズなどの病気を防ぐためや、マーキングを改善したり、徘徊行動、マウント行為の軽減も期待できます。精巣を取り除きます。
生後6~10か月ほどで手術が可能です。動物病院で変わってきますが、費用は1~2万円ほどでしょう。日帰りや1日の入院になります。
最後に
昔は、公園に段ボール箱の中に捨てられた猫の姿を多く見かけ、近所の人が飼ってくれていましたが、今ではすぐに殺処分の対象になってしまいます。野良猫の避妊・去勢手術まで面倒を見ることは難しいですが、家族として一緒に暮らしている愛猫の体調や妊娠出産については、飼い主が気を配ってあげましょう。特に家の中と外を自由に出入りするような生活をしているメスの猫には気をつけたほうがいいですね。
猫の繁殖率はとても高いので、飼い主が気を付けてあげるほかにありません。可愛い猫と一緒にずっと楽しく暮らしていけますように。