犬が鳴くのは自然なこと。人間も声を出したり、泣いたりします。人間は声に出し言葉にすることで、思っていることや感じたことを相手に伝えることができます。犬は言葉にすることはできませんが、視線や動作、そして鳴き声で想いを伝えてきます。
中でも、夜に鳴くことがあります。なぜ夜に鳴くのでしょうか。
今回は、出張わんこケアサービス「犬と、人と、」を主宰されているペットのプロ大木さん(大木さんのプロフィールは記事最後にあります)に、犬の夜泣きについてご意見をいただきました。
犬が夜泣きをするのはなぜ?犬の年齢別の原因4つ
1. 1歳までの子犬が夜泣きする原因は?
子犬は赤ちゃんです。泣いて当然なので、夜泣きもしょうがないと考えてください。特に1歳前であればなおさらです。
2. 1歳を超えた犬の夜泣きの原因は?
原因は、甘えや欲求不満が考えられます。また、日中の体力が余っているかもしれません。
飼い主が1人暮らしで他に家族がおらず、日中にしっかり犬をかまってあげていない、多頭飼いではなく1匹で暮らしている、そのような状況では犬にとってはスキンシップも、遊びや喧嘩も足りていません。体力が残ってしまい、甘えたり欲求不満になることもあります。
夜泣きは1歳を超えたら自然に治るはずなので、1歳を超えても夜泣きが収まらないような時はどこに原因があるのかは一概に言えません。よく観察してあげましょう。
あまりにも夜泣きが収まらないようであれば、先天性疾患があるかもしれません。獣医師への受診をお勧めします。
3.シニア期(8歳〜)の犬のよくある夜泣きの原因は?
シニア期を超えて夜泣きが始まったときは、脳疾患や認知症が考えられます。やはり、獣医師への受診をお勧めします。
4.【ペットのプロ】大木さんの愛犬はどうですか?
うちは2頭の犬と暮らしています。2頭とも夜泣きはありません。子犬の頃から夜泣きで困ったことはないです。
ベッドで一緒に寝ているので、安心しているのかもしれません。
犬が夜泣きをする時にしてはいけないこと2つ
1.犬をいきなり叱らない
犬は夜泣きをしているときに叱られると、まず「なぜ叱られているの?」と叱られている意味が理解できません。
もちろん叱ったら驚くので、一瞬止まります。しかしそれを繰り返すと、なぜ叱られるかわからないまま、夜泣きが続いたりトラウマになってしまう可能性があります。
2.犬に天罰方式の処置をしない
天罰方式とは、飼い主の言うことを聞かないときに犬が驚いたり怖がるようなことをして「これをすると、嫌なことが起きる」と植え付ける方法です。犬が夜泣きをしているときに大きな音を立てたり、犬に見えない位置で壁をドンドンと叩いたりして、犬の行動を制限したりやめさせる方法です。
犬が夜泣きをしているときに天罰方式でやめさせようとするのは、止したほうがいいと思います。かえってトラウマを植え付けるだけです。
ドンと音を立てるようなものは意味がありません。
子犬が夜泣きをする時の対処法2つ
1.子犬と一緒に寝る
一緒に寝ましょう。ベッドで一緒に寝ることができない時は、ケージを飼い主のベッドに寄せてあげましょう。
ケージで寝かせるときには、飼い主の匂いがするものと一緒に寝かせるといいでしょう。例えば洗濯前のTシャツや枕カバーなどの布をケージの中に入れてあげましょう。
子犬は飼い主が大好きです。安心して寝ることができます。
2.子犬と一緒にいる時間を長くする
子犬なので散歩に行くことがまだできないようなときは、一緒に過ごす時間を長く取るようにしましょう。寝る前に、徹底的に甘えさせてあげてください。楽しい時間を過ごして、一緒にいる時間を長くしましょう。子犬も飼い主とゆっくる過ごすことで安心して、精神が安定します。
子犬の夜泣きについては新潟県の「今どきの、犬の飼い方【動物愛護センター】」も参考になります。
成犬が夜泣きをするときの対処法
まず夜泣きを止めようとする前に「なぜ夜泣きをするのか?」を考えましょう。
なにかを要求しているのでしょうか?
遊んで欲しいのでしょうか?
甘えたいのでしょうか?
体力が余ってしまっているのでしょうか?
散歩してほしいとか、体力が余っているので遊んでほしいとか、そういった理由で鳴くこともあります。
また、水やご飯の量は足りているでしょうか。お腹がすいていたりのどが渇いたりしていませんか?やせすぎなど体型におかしいところはないでしょうか。
他にも、成犬が急に鳴き始めた、夜泣きをするようになった、吠え始めたなどは、周囲を警戒している可能性もあります。
もしかしたら家の周囲に不審者がいるかもしれないので、少し用心したほうがいいかもしれません。
老犬が夜泣きをするときの対処法4つ
1.老犬からの何かの要求かもしれない
老犬は自分の行動を忘れることがあります。例えば、ご飯を食べたことを忘れ、食事の要求をしているかもしれません。そのようなときは少々ご飯をあげると収まるかもしれません。
2.老犬は特に、夜泣き以外の行動の変化がないか確認する
夜泣き以外に、動き回るとか、徘徊するようになりぶつかって転ぶとか、そういったことが起こる可能性もあります。
夜泣きに合わせて日頃の行動も観察し、夜泣き以外の行動が出てくるようであれば、老犬の身の安全を考えてあげましょう。犬が乗り越えることのできない子供用のプールの中にクッションを敷きつめるなど、ぶつかったり転んだりしても危なくないように対処してあげましょう。
3.夜泣きがあまりにもひどい時は騒音対策をする
隣近所など、家族以外の周囲に迷惑をかけていないか考慮しましょう。
迷惑をかけているようであれば防音対策も必要です。また、犬の夜泣き対策グッズというものもあります。
ケージに防音カバーをかけて音対策をするグッズなど、愛犬の負担にならない対策グッズも検討してみてください。
4.一緒に暮らせるかどうかを判断する
老犬の夜泣きは、対策が難しいです。犬自身が夜泣きを意識していない(夜泣きをしていることに気づいていない)こともあるためです。
夜泣きがひどく、おさまらない時の対処法5つ
1.一緒に寝る
愛犬と一緒に寝て、安心させてあげましょう。安心させることのできる要因として「匂いと温度」があげられます。
一緒に寝るのが無理で、犬がひとり寝をするときは湯たんぽを添えてあげると、温度を感じることができます。また、シャツなど飼い主の匂いのついたものも用意してあげると落ち着きます。
2.音を用意する
静かすぎて怖がって、夜泣きをしているかもしれません。時計が心音に聞こえて安心することもあるので、アナログ時計を飼い主の匂いがするもので包んで、寝るときに添えてあげてもいいかもしれません。
3.少し明るい空間を作る
暗闇で怖い体験をしたことがあり、暗闇を怖がっていることもあるかもしれません。真っ暗な状態で夜泣きをするようであれば、デスクライトなどを灯して真っ暗にしない空間を作ってあげてもいいかもしれません。
4.留守番の時間(犬が1匹で過ごす時間)を短くする
犬の年齢や性格に応じて留守番の時間を調整してあげましょう。難しいかもしれませんが最長4時間に留めた方がいいかもしれません。一人きりでいる時間が長いほど犬も不安になってしまいます。
定期的にペットシッターを利用するのも一つの方法です。
5.獣医に相談する
それぞれの方法や様々な方法を試してもどうしても変わらない時は、獣医師に相談してみましょう。最近では、犬の問題行動専門医師もいらっしゃいます。
ペットのプロ・大木さんのご意見を教えてください
一頭の犬と一緒に過ごせるのは、一体どのくらいの時間でしょうか。大型犬で8年~10年、小型犬でもせいぜい長くても20年です。この「一緒に過ごせる時間」は飼い主にとって、そして犬にとって長いでしょうか、短いでしょうか。
犬の寿命はあきらかに人間の寿命よりは短く、さらに、四六時中一緒にいるわけでもありません。普段は外で仕事をしている人ならば犬と一緒に過ごせる時間はさらに短いでしょう。そしてその犬の短い一生の間、犬は飼い主を慕い、信頼してくれています。
いつまでもずっと一緒にいられないのだから、せめてたくさん甘えさせてあげてもいいのではないでしょうか。不安にさせないよう、家族として大切に扱ってあげてもいいのではないでしょうか。
一緒に暮らしていれば人間同士でも親子喧嘩も兄弟喧嘩もあります。対等に過ごしていれば人間と犬が喧嘩をすることもあるかもしれません。
しかし犬を飼うときには「この子は自分より早く死に向かう」ことを念頭に置いて、どのように接するかを決めてください。
それをわかって覚悟した上で犬と毎日を過ごさないと、犬が虹の橋をわたるときに、飼い主もペットロスになりかねません。やり残したこと、「もっとしてあげることがあったのではないか」と思い、悔いが残るからペットロスになるのではないでしょうか。もちろん、1日1日を大切に犬と過ごしても、ペットロスは起こりうるでしょう。
結果として、犬と楽しく仲良く暮らす方法を考えればいいのではないでしょうか?もちろん、人間と犬が家族として対等に過ごすことにはリスクもあります。外で散歩をさせるときや他の人間と接するときに、家族以外の人たちに迷惑をかけないようにする必要はあります。
しかし過度に厳しくしたり、周囲に「うちの子は本当にバカ犬で」などと蔑む言葉を使わなくてもいいと思います。
楽しく犬と暮らすために
犬の夜泣きについて、ペットのお世話の仕事をなさる大木さんにお話を伺いました。お話を伺っていると、犬を大切に思っていることが言葉の端々で理解できました。
そして「犬や飼い主のことを客観的に見ていらっしゃる視点」と「大木さんご自身の意見」を分け、さらに、犬のことに詳しくないインタビュアーにもわかりやすく話してくださいました。
「夜泣きをするときの対処法」に対して「こうしてください」と言いきることができず「こうするといいのではないでしょうか」とお伝えしているのには、犬それぞれによって夜泣きをする理由が異なるためです。
人間がそれぞれ違うように、犬もそれぞれ、夜泣きをする理由は異なります。
犬をよく観察し、どうして夜泣きをするのか考えてあげて、その理由を取り除いてあげられるよう色々と試してあげてください。
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インタビューをさせていただいたZehitomoのプロ:大木 伸夫さん
医療機器メーカーを退職後、専門学校にてトリミング技術・犬学などを習得。
在学中より動物病院・ペットショップ・ペットサロン勤務などを経て、2017年7月に出張わんこケアサービス「犬と、人と、」を開業。
記事を読んで「大木さんに愛犬のお世話をお願いしたい」「愛犬の様子を見てほしい」と思った皆様、ぜひとも、依頼を出してみてくださいね。