造園と外構工事は、庭の空間づくりを担う工事といった点が共通点です。ただし、造園と外構工事の意味合いは、本質的に異なります。どのような違いがあげられるでしょうか。この記事では、造園と外構工事の違いや工事別の費用などに関して、解説します。
庭のリフォームや外構工事を検討している方は、最後までご覧ください。
株式会社ミドリカフェ代表。造園・ランドスケープデザイナー/木材コーディネーター。 京都工芸繊維大学工芸学部卒業後、造園コンサルタントに約8年従事。 独立後“都市部におけるエコでスローなライフスタイルの提案” をコンセプトとした設計事務所兼店舗「ミドリカフェ」をオープン。 公園緑地や里山整備の設計デザイン・コンサルティングを通じて、地域資源の循環利用や、参加型の緑化・場づくりなどを提案している。 2019年(財)都市緑化機構みどりの環境プラン大賞・大賞受賞。2023年「第13回地域再生大賞」優秀賞受賞。
外構工事とは
引用:pixabay
外構とは住宅やビルなど、建物の周囲にある構造物のことです。カーポートやウッドデッキ、フェンスなど、構造物を設置する工事を外構工事と呼んでいます。外構工事は工事の種類が多いため、工事業者は特定の分野に特化しているケースも少なくありません。
エクステリアとの違い
エクステリアとは、住宅の外側にある空間全体を指す言葉です。玄関アプローチや照明など、外構工事で構造物を設置し、エクステリアを彩ります。
また、エクステリアの対義語はインテリアです。「住宅周りの空間を設計する言葉」としてエクステリアを理解すると、イメージがしやすいでしょう。
造園とは
造園とは樹木の剪定や植栽などによって、庭と周囲の空間を美しくデザインすることです。自然素材でなく、花壇やウッドデッキなどを設置し、美しい庭園に仕上げる場合もあります。ガーデニングや和風庭園をイメージしてもらうと、わかりやすいでしょう。
和風住宅が主流だった時代は、剪定や植栽を専門に請け負う庭師が数多く存在していました。庭師の仕事は造園業と呼ばれ、現在は造園工事会社が庭園の設計やデザイン、管理などを専門事業として運営しています。
また、外構工事と異なり、造園の対象は一般住宅だけではありません。公園や遊園地、街路樹など、公共空間のデザインや保守管理も造園の対象です。景石の設置や芝生の植栽、地ならしなど、工事の内容もさまざまで、幅広い分野に精通していなければなりません。
多くの専門知識が求められるため、造園工事は1級・2級造園施工管理技士をはじめ、有資格者が担当します。無資格者が工事に携わる場合、10年以上の実務経験が必要です。
外構工事の費用相場
以下7つの外構工事の施工費用に関してご紹介します。
- 玄関アプローチ
- ウッドデッキの設置
- カーポートの設置
- 目隠しフェンスの設置
- テラス囲いの設置
- サンルームの設置
- 外構照明の設置
複数の工事を検討している場合、予算内で施工できるかどうか、把握しておきましょう。
玄関アプローチ
戸建て住宅に玄関アプローチを新たに設置する場合、施工費用は6平米あたり30万〜60万円が相場です。既存の玄関アプローチをリフォームする場合、リフォーム費用は10〜30万円が相場になります。ただし、構造物の撤去の工事費用や処分費用などが別途かかる場合があります。
玄関アプローチは、道路から玄関までを結ぶ短い道のりです。以下5つの要素で構成されています。
ご自宅の印象を外部の方に印象付ける上で、玄関アプローチは非常に重要な空間です。どの要素を取り入れるかによって、設置費用やご自宅の印象が大きく変わります。特にスロープは5mあたり40万〜50万程の費用が必要になるため、事前に必要性を検討しておきましょう。
素材の種類例
玄関アプローチに使用される主な素材として、次のものが挙げられます。
各素材の特徴や費用に関して、以下の表にまとめました。玄関アプローチの施工を始める前に、個々の特徴を理解しておくことが重要です。
タイル
特徴 | 費用(1㎡あたり) |
・優れた耐久性と防汚性・高級感を演出・メンテナンスが不要 | 15,000円~50,000円 |
レンガ
特徴 | 費用(1㎡あたり) |
・洋風のおしゃれな雰囲気を演出・温かみのある雰囲気・水はけの良さ | 30,000円 |
コンクリート
特徴 | 費用(1㎡あたり) |
・優れた耐久性・水はけの良さ・デザインのバリエーションが豊富 | 7,000円〜9,000円 |
人工芝
特徴 | 費用(1㎡あたり) |
・メンテナンス不要・施工が比較的簡単・害虫対策 | 5,500円~11,500円 |
砂利
特徴 | 費用(1㎡あたり) |
・雑草対策・防犯対策の強化・簡単に入手が可能 | 10,000円~20,000円 |
ウッドデッキの設置
ウッドデッキの設置費用は、10万〜50万が相場です。ウッドデッキの材質は天然木と人工木、2種類から選択できます。単価は1㎡あたりで天然木が4万〜7万円です。人工木は3.5万〜7万円となっており、天然木の方が単価は安く設定されています。
人工木は耐久年数が長く、腐食やシロアリ被害のリスクを最小限にすることができます。また、天然木は肌触りが優しく、地球環境に対する負荷も少ないです。それぞれのメリットや特徴を考えて、どの材質を使用するかを決めることが大切です。
カーポートの設置
居住地域の積雪量に応じて、カーポートを選びましょう。カーポートはエントリータイプと積雪タイプ、2種類に分けられます。エントリータイプは、降雪量が20cm以下の地域にお住まいの方に適したカーポートです。
基本的な機能は搭載しており、設置費用を安く抑えられます。エントリータイプの場合、設置費用は10万〜30万円が相場です。
一方、積雪タイプは耐雪性能に優れたタイプのカーポートです。積雪量は30cm〜200cmまでに設定されており、強度に優れている商品ほど、本体価格は高くなります。積雪タイプの設置費用は、30万〜100万円が相場です。
目隠しフェンスの設置
目隠しフェンスの設置費用は、フェンスの本体価格+工事費用で算出し、1mあたり7,000円〜30,000円がリフォーム費用の相場になります。仮に20mフェンスを設置した場合、設置費用は15万〜60万が一つの目安です。ただし、既存のフェンスを撤去する場合は工事費用や処分費用がついかでかかってきます。
フェンスの素材や施工面積によって、リフォームにかかる費用は変動します。フェンスの本体価格相場は、1mあたり5,000円〜60,000円程度と幅広いです。
素材別の単価に関して以下の表にまとめました。
フェンスの種類 | 1mあたりの費用 |
スチールフェンス | 5,000円〜10,000円 |
樹脂フェンス | 10,000円〜30,000円 |
アルミフェンス | 10,000円〜60,000円 |
竹垣フェンス | 15,000円〜30,000円 |
鋳物フェンス | 20,000円〜30,000円 |
木製フェンス | 30,000円~40,000円 |
デザインやメンテナンス性など住まいのイメージに合ったフェンスを選びましょう。
テラス囲いの設置
テラス囲いとは、屋根+床+囲いで構成されたエクステリア商品です。庭の一部を潰して設置し、リビングの延長や洗濯物の干場として活用します。テラス囲いの設置費用は、10平米で30万〜50万円が相場です。
また、テラス囲いの床材は以下の3種類から選択できます。
素材別の施工費用を以下の表にまとめました。
素材の種類 | 施工費用(相場) |
ウッドデッキ | 25万~40万円 |
タイル | 20万円 |
レンガ | 25万円 |
サンルームの設置
サンルームとは、屋根や周囲をガラスで覆ったエクステリア商品です。LIXILのサニージュや三協アルミのハピーナリラなどが該当します。サンルームの設置費用は、50万〜110万円が相場です。サンルームのグレードによって、リフォームにかかる費用は変動します。
また、サンルームはテラス囲いと異なり、既存のベランダ・バルコニーの上に設置できません。庭を使って新たに基礎工事をおこなう必要があるため、テラス囲いより多くの費用が必要になります。
サンルーム設置の際の注意点
サンルームを設置する前に、2つの点に関して理解しておかなければなりません。1点目は建ぺい率に関してです。建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合を指します。建築基準法に上限が定められており、リフォームの際は上限を守らなければなりません。
仮にリフォームによって上限を超過した場合は違反建築物とみなされ、金融機関からの融資や住宅の売却が困難になります。2つめは固定資産税の増額に関してです。固定資産税の支払い対象を以下に記載しました。
- 屋根がある
- 3方向以上が壁やガラスで囲まれている
- 床~天井までの高さが1.5m以上ある
上記の条件にサンルームは合致しており、リフォームによって建築面積が増えると、固定資産税の支払い金額が増えます。たとえば、6畳程度のサンルームを設置したとしましょう。固定資産税の支払い額は、年2万円前後増えるのが1つの目安です。
また、不動産登記の変更手続きも必要になるため、土地家屋調査士に支払う委託料金も発生します。
外構照明の設置
庭や玄関アプローチの周辺に外構照明を設置すると、安全性や防犯対策を強化できます。外構照明の設置費用は、1箇所あたり3〜4万円が相場です。照明の本体価格+工事費用+電源費用によって、施工費用を算出します。
また、近年はLEDタイプの照明が主流のため、電気代の高騰を過度に心配する必要はありません。
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造園の費用相場【住宅向け】
造園工事業者によって、施工費用の算出方法は異なるため、以下3種類のパターンを覚えておきましょう。
①:作業員の労働時間で算出
②:施工内容で算出
③:作業員の労働時間+施工内容で算出
①の場合、職人の日給は有資格者が18,000円〜30,000円、無資格者は10,000円〜15,000円が相場です。①を採用している場合でも、出張費や清掃費、枝葉の処分費などが、別途発生する可能性もあります。必ず見積の項目を確認しましょう。
②に関しては以下で詳しく紹介します。③に関しては職人の日給+工事内容が合算されるため、もっとも費用が高騰するタイプです。
樹木の剪定
樹木の剪定は余分な枝葉を切り落とし、美しいかたちに整えるのが目的です。成長に必要なエネルギーを蓄え、新芽の発生促進や病虫害予防を果たす目的もあります。樹木の剪定費用は、木の高さによって単価が変動する点が特徴です。
木の高さ別の剪定費用を以下にまとめました。
木の高さ | 剪定費用の相場(1本あたり) |
低木(3m未満) | 1,000円〜4,000円 |
中木(3〜5m) | 4,500円〜9,000円 |
高木(5〜7m) | 9,500円〜20,000円 |
また、生垣を剪定してもらう場合、生垣の高さと施工面積によって費用は変動します。生垣の剪定費用に関して、以下の表にまとめました。
生垣の高さ | 剪定費用の相場(1㎡あたり) |
1m未満 | 3,000円 |
1〜2m | 5,000円 |
2〜3m | 7,000円 |
仮に中木が5本、3mの生け垣の剪定を同時に依頼した場合、施工費用は3万〜6万円程度になります。
植栽工事
植栽とは、お住まいの庭や外構に植物を植えることです。お住まいに季節の変化や彩りを加えられ、華やかな雰囲気を演出できます。植栽は工事内容によって施工費用が大きく変動するため、工事別の単価を知っておくことが重要です。
たとえば、シンボルツリー(記念樹)を庭に植える場合、施工費用の相場は10万円程度になります。施工費用はツリー本体+客土+植木費用によって算出し、ツリーの高さや幹周りの太さに応じてに応じて費用が数千円~1万円単位で加算されるかたちです。
また、生垣を設置する場合、施工費用は1㎡あたり7,000円〜1万円が相場になります。そして、植栽工事を一式で頼んだ場合、施工には10万〜20万円の費用が必要です。土壌環境によっては他に排水工事や土壌改良工事などの費用が必要になります。
庭の空間づくり(造園)
住宅の庭全体を造園する場合、造園費用は50平米で50万〜100万円が相場です。職人の人件費+材料費によって、造園費用を算出します。職人の単価や人数、作業日数などによって、造園費用は大きく変動するため、必ず見積を取得しましょう。
また、工事内容には植栽や整地、砂利敷きなど、さまざまな内容が含まれます。重機を使った地ならしや勾配付けなど、大規模な工事を依頼できる点が特徴です。ただし、重機を使った工事の場合は、回送費(運ぶ費用)などが別途必要になります。
造園+外構工事
庭の空間づくりに加え、外構工事も同じ業者に依頼できると、業者を探す手間が省けます。造園+外構工事を同時に依頼した場合、施工費用は50平米で100万〜300万円が相場です。ただし、造園と外構工事の双方に対応可能な工事業者はさほど多くありません。
建ぺい率や固定資産税など、法律に関する知識も必要です。また、テラス屋根やサンルームの設置などは施工の難易度が高く、優れた職人が在籍する業者にしか対応できません。造園+外構工事を同じ業者に依頼する際は、施工実績や事例を必ず確認しましょう。
外構・造園工事の前に整理すべき内容
外構工事と造園工事、どちらの工事を依頼する場合でも、事前に以下3つの内容に関して整理をしておきましょう。
- 仕上がりのイメージを明確にしておく
- 優先順位を決めておく
- メンテナンスの負担も考慮する
どのような空間を作りたいかが決まっていないと、意図と異なる仕上がりになる可能性が高まります。また、複数の外構工事を実施する場合、予算内に施工費用を抑えるため、優先度の高い工事を決めておくことが重要です。
仕上がりのイメージを明確にしておく
造園や外構工事を依頼する前に、どのような空間を設計したいか、イメージしておくことが重要です。コンセプトが曖昧だと、イメージと異なる空間に仕上がる可能性が高まります。
たとえば、季節の移り変わりを感じられる庭づくりをしたいとしましょう。シンボルツリーと生垣のどちらを選ぶか、どのくらいの広さを施工するかといった、植栽工事に関する依頼内容を固めておかなければなりません。
シンボルツリーを設置した場合、大きなインパクトを与えられる点が特徴です。一方、生垣を設置した場合、自然素材ならではの温かい雰囲気に仕上げられます。上記のようにイメージが固まると、決めておくべき内容も明確になります。
優先順位を決めておく
複数の外構工事を同じ業者に依頼する場合、優先順位を明確にしておくことが重要です。工事の依頼内容が増えるほど、施工費用も高額になります。また、ご自身が依頼したい内容の工事を得意としている保証もありません。
場合によっては工事業者の見直しが発生するため、優先的に実施したい工事内容をご家族と話しあっておきましょう。
メンテナンスの負担も考慮する
目先の施工費用だけでなく、メンテナンスに関して考えておくことも重要です。メンテナンスフリーで利用可能な材質を選んだ方が、トータル的に多くのメリットを得られます。
たとえば、目隠しフェンスの設置を検討していたとしましょう。コストパフォーマンスに優れているのは、アルミフェンスです。単価の安い素材はありますが、アルミフェンスは半永久的に利用できます。メンテナンスの必要もほとんどありません。
工事内容によっては、メンテナンスコストも考慮する必要がある点を覚えておきましょう。
外構・造園工事業者の選び方
工事業者を選ぶ際、以下3点を意識することが重要です。
- 得意分野と実績を確認する
- 自社施工が強みの会社を選ぶ
- 複数の会社から見積を取得する
個々の内容をみていきましょう。
得意分野と実績を確認する
外構工事と造園工事のどちらを依頼する場合でも、依頼内容の施工実績が豊富かどうかを必ず確認しましょう。すべての工事内容を得意とする会社はほとんどありません。特定の分野に特化しているケースがほとんどです。
施工実績や得意分野を確認した上で、依頼先の候補に含めるかを判断しましょう。予算や依頼内容などに関して、ご自身と近い内容の事例があると、高確率で要望に見合う仕上がりが望めます。
自社施工が強みの会社を選ぶ
外構工事が得意なリフォーム会社や工務店もなかには存在します。リフォーム店に依頼した場合は、複数の工事を依頼できる点がメリットです。一方、工務店は地域密着型の経営スタイルを掲げる企業が多く、予算や要望に応じた柔軟な提案が得られます。
リフォーム会社や工務店に依頼する場合は、自社施工を強みとする会社に依頼しましょう。自社で工事を完結するため、中間マージンが施工費用に上乗せされることがありません。
費用の高騰を避けるため、打ち合わせの際に他の会社へ作業をどの程度振っているか、確認しましょう。
複数の会社から見積を取得する
1社からしか見積を取得しなかった場合、リフォーム費用の相場や担当者の能力を正確に見極めるのが困難です。他の会社と見積できないため、相場以上の費用を支払う可能性が生じます。
また、担当者の経験が浅い場合、要望をすり合わせるために何度もやりとりを重ねなければなりません。最悪の場合はイメージと異なる仕上がりになり、多額の費用が無駄になる可能性が生じます。
ミスマッチを避けるため、工事業者を5社前後選んでおいてから、絞り込みをしましょう。ただし1社がプランニングした図面をもとに複数の工事会社から相見積もりをとることは、プランニングした設計料を払わない限り、原則として著作権侵害に当たる可能性が高いので注意してください。
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外構工事や造園工事の依頼先を決める際は、複数の工事業者から絞り込みをします。ただし、施工実績や事例を1つずつ確認していくのは大変な作業です。工事の依頼先を短時間で決めるため、ビジネスマッチングを活用しましょう。
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