全解説!個人事業主の保険や年金・共済の仕組み
個人事業主になると、様々な課題や問題に直面します。
しかしクライアントを獲得し売上をあげなければいけない中で、契約や法務、経理や労務などといったバックオフィス業務をどうしたらいいのかわからない、という方は少なくないのではないでしょうか。
そんな個人事業主のバックオフィス業務ですが、その中でもここでは“個人事業主の保険”に焦点を当てて解説をしていきます。
健康保険や国民年金などの社会保険や共済、雇用保険や労災保険、会社員との違いや保険料の仕訳方法、保険料受け取り時の対応など、個人事業主の保険にまつわるすべての内容についてなるべくわかりやすく解説していきます。
(本記事における内容は、2017年6月時点で日本政府や各政府系組織が公表している情報を参照元にしています。)
社会保険
個人事業主としてまず気になるのが、社会保険ではないでしょうか。
日本年金機構によると、社会保険には国民年金と健康保険の2つがあり、会社員の場合は会社が加入手続きを行うことが義務付けられています。
個人事業主の場合は自身が居住する地域の役所に行き、国民健康保険、国民年金担当窓口にて自分で手続きをしなくてはなりません。
なお外国人の方も、入管によって定められた在留期間が3ヶ月以上の方もしくは仮滞在の許可を得た方は健康保険に必ず加入する必要があり、日本国内に住所を有する方は全員、国民年金にも必ず加入する必要があります。
ここでは国民年金と健康保険についてお伝えしていきます。
1.国民年金
国民年金(基礎年金)は、現役世代(15~64歳)であればすべての人が被保険者となります。国民年金機構の資料にあるように、会社員や公務員の方は国民年金に追加して厚生年金保険が支払われるため、年金の仕組みは「2階建て」の構造と呼ばれます。

抜粋: 公的年金の仕組み(厚労省)
個人事業主は「第1号被保険者」と分類され、厚労省のデータによると平成27年3月末時点で1,742万人が第1号被保険者として分類されています。
第2号被保険者はいわゆる会社員や公務員のことをいい、第3号被保険者は「第2号被保険者の被扶養配偶者」とありますが、いわゆる会社員や公務員を夫に持つ専業主婦の方が主に当てはまります。
会社員から個人事業主になるという方が保険に関して理解しておくべきことは、「2階が1階になる」ということです。会社員であれば国民年金に追加して厚生年金を支払っていたため、65歳以降の老後にもらえる年金は個人年金単体よりも多くなります。
個人事業主になると1階部分である国民年金の部分のみ支払い、老後に受け取ることになります。
2.国民健康保険
日本では、「国民皆保険制度」と呼ばれるように、国民全員が健康保険にて医療サービスを受けられるよう保障されています。個人事業主の方も、当然なんらかの形で保険に加入していなければなりません。
健康保険には保険者によって種類があり、国民健康保険、協会けんぽ、健康保険組合、共済組合の4つに大別されます。
個人事業主の方は主に国民健康保険に加入します。以下では、個人事業主の方が加入することができる健康保険についてご説明します。
a.国民健康保険に加入する
厚労省HPにある通り、個人事業主(自営業者)の方が加入する健康保険は、原則としてこの国民健康保険になります。
他の医療保険(健康保険組合、協会けんぽ、共済組合)に当てはまらない方を対象にした保険で、すべての人に当てはまるため国民皆保険制度の基礎と呼ばれます。
加入の方法ですが、ご自身が居住している地域の役所に向かい、国民年金担当窓口や健康保険に関する窓口で加入の手続きを行うことで完了します。
b.健康保険組合に加入する
健康保険組合とは、上図にあるように健康保険の中でも主に大企業のサラリーマンが主に加入している医療保険のことを言います。
個人事業主の方には一見利用できない、関係がないように感じるかもしれませんが、個人事業主の方でも業種によっては加入できる健康保険組合があります。
クリエイターの方であれば、文芸美術国民健康保険組合にて加入条件を満たし、加入することで国民健康保険をより安く抑えることができます。
加入資格
文芸、美術及び著作活動に従事し、組合加盟の各団体の会員である方とその家族
・なお、法人事業所の事業主、従業員の方々は健康保険が強制適用となっており、当組合を含め、国民健康保険には加入できません。
・後期高齢者の方(75歳以上の方、または65歳以上75歳未満で広域連合より障がい者認定を受けている方)は加入できません。
・住民票上同一世帯の方については、健康保険に加入すべき方、後期高齢者医療制度 に加入されている方を除き、ご一緒に加入となります。
引用:文芸美術国民健康保険組合
総合加盟の各団体を見ると、平成28年7月27日時点では64の団体が加盟しており、文芸美術国民健康保険に加入するためには、このうちのどれかに加入する必要があります。
気になる保険料ですが、以下のようになっています。平成29年度(平成29年4月から)の場合となります。
保険料
組合員の収入が多い、少ないに関わらず均等です。
医療保険・後期高齢者支援金分
組合員: 1人月額19,600円 (内訳: 医療保険分16,000円 後期高齢者支援金分 3,600円)
家族: 1人月額10,300円 (内訳: 医療保険分 6,700円 後期高齢者支援金分 3,600円)
介護保険分
満40歳から64歳までの被保険者: 1人月額4,000円
特例組合員分
満75歳以上の組合員: 1人月額1,000円
保険料水準は組合によって異なりますが、この文芸美術国民健康保険の場合はご覧の通り定額の金額になるため、国民健康保険とは違い収入があがっても健康保険を定額に抑えることが可能です。
たとえば江戸川区に在住の30歳未満独身の場合、月額19,600円で固定されるため年額で235,200円となります。
これは国民年金では年間の給与所得が2,300,000円(年金所得などがないと仮定し、基礎控除を引くと年間所得は¥1,970,000)の方が支払う健康保険料の年額(年額¥235,271, 平成28年時点)とほぼ同じになります。
つまり、年額の所得が230万円以上ある方であれば、文芸美術国民健康保険組合に加入して健康保険を支払うことで、健康保険料を抑えることができることになります。
またちなみに保険者別の平均保険料負担率を見てみると、国保が最も平均保険負担料率が高く、組合健保(健康保険組合)が最も平均保険料負担率が低いことがわかります。
クリエイターの方であれば文芸美術国民健康保険組合に加入するようにするとお得ですし、もし自身の職種などで加入できる健康保険組合があった場合はできるだけ加入した方がお得になる可能性が高いということです。
c.社保を任意継続する
会社員からフリーランスになる方であれば、退職時に「健康保険は任意継続をしますか?それとも国民健康保険にしますか?」という質問を労務に関わる方から受けるはずです(結婚を機に専業主婦になるという方であれば、被扶養者になりますか?という質問もありえますが、詳しくは後述します)。
以下の条件を満たしている方であれば、健康保険を2年間継続加入にしておくことができます。
健康保険任意継続制度について
・資格喪失日の前日(退職日)までに継続して2ヵ月以上の被保険者期間があること
※退職せず、勤務時間・日数の減少により健康保険の資格を喪失した場合も該当します。
・資格喪失日から20日以内に、「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出すること
※お住まいの住所地を管轄する協会けんぽ支部へご提出ください。
※健康保険組合に加入していた方は、健康保険組合にて手続きをします。
任意継続被保険者になった場合は、原則として、在職中と同様の保険給付が受けられます。
ただし、退職日まで継続して1年以上被保険者であった方が、退職日時点で傷病手当金や出産手当金を受けているか、受ける条件を満たしている場合を除き、傷病手当金や出産手当金を受けることはできません。
以上のように、退職日までに2ヶ月以上会社に勤務していた方で、健康保険の資格を喪失してから20日以内の方であれば、健康保険の任意継続を利用することができます。
引用は協会けんぽからの引用ですが、健康保険組合も同じ条件になります。
なお国民健康保険に変えた場合と任意継続した場合を比較すると、どちらを選ぶべきなのかは状況によります。
国民健康保険は前年の所得に保険料率をかけて算出されますが、健康保険組合の場合は退職時の標準報酬月額、もしくは組合の中で算出した被保険者の標準報酬月額の平均の2つのうち低い方に保険料率をかけて算出されます。
よって、前年の所得が少なかった方は国民健康保険が良いですし、そうでなければ会社の保険を任意継続すると良いでしょう。
d.扶養家族に入る
以下の条件を満たす場合、パートナーの保険の扶養に入ることができます。
・被保険者の直系尊属(親や祖父母など)、配偶者(戸籍上婚姻の届出はしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある方も含まれます)、子、孫及び弟妹であって、主としてその被保険者によって生計を維持されている方
・次に掲げる方で、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者によって生計を維持されている方
1.被保険者の3親等内の親族で上記1に該当する以外の方
2.被保険者の配偶者で戸籍上婚姻の届出はしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある方の父母及び子
3.上記(2)に掲げた配偶者が死亡した後におけるその父母及び子
また、”生計を維持されている”という状態についてより詳しい説明が以下になります。
認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。
認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となります。
結婚していて会社員から個人事業主に転身したものの、年間の収入が130万円以内になる予定の方は、扶養に入ると良いでしょう。
ちなみに、”130万円未満”は社会保険における所得額になりますが、”103万円未満”は税制上の扶養控除を受けるための所得額になります。
共済
ここまで個人事業主の方の社会保険(国民年金と 国民健康保険)について述べてきました。しかし保険はもちろん公的な社会保険だけではなく、さまざまな保険の種類があります。
ここでは個人事業主の方のための共済について述べていきます。
それでは、そもそも共済とはなんなのでしょうか?JA共済の定義を見ると、共済は、共済に加入した組合員同士で掛け金(共済掛金)をあらかじめお互いに支払い合い、組合員に生活上の問題(入院や災害、事故など)が発生した時に共済金を受け取ることができるようにすることで、生活上のリスクを軽減させる仕組みのことを表します。
いわば「いざという時のための、みんなで集めた貯金」です。共済には様々な種類があるので、各共済が定める条件に当てはまる限り自由に共済に加入することができます。
様々な共済の中でも、個人事業主の方に特にご紹介するべき共済としては主に小規模企業共済と、中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)の2つがあります。
1.小規模企業共済

画像引用:中小機構
会社員であれば、長期間会社に勤め上げることで退職した際の退職金をもらうことができますが、個人事業主の場合は退職金がありません。しかしたとえば65歳で現役を退いた場合、国民年金の給付だけだと生活が厳しくなってしまう可能性があります。
また個人事業を廃業した際に、次の仕事を見つけるまでなど、生活に困ってしまう可能性もありますね。そこで役立つのが小規模企業共済です。
この共済は、個人事業を廃業したり、経営役員が退任した場合のための生活資金をあらかじめ積み立てておくことができる共済です。昭和40年に発足しており、平成28年3月末時点で165.7万件の在籍件数をほこっています。
条件としては、従業員数が20名以下(商業、サービス業では5名以下)の企業の経営役員や個人事業主であれば加入することができます。
掛け金は1,000円〜70,000円以内で設定することができるため、家計を見ながら計画的に金額を決めることができます。受け取り共済金の金額は毎月の掛け金の金額と、支払った月数を基準にして計算されます。
2.中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)

画像引用:中小機構
「連鎖倒産」という言葉を聞いたことがありますか?取引先企業が倒産してしまったことで、不良債権を抱えてしまった企業が連鎖的に倒産してしまうことを言います。
個人事業主の方も、取引先が倒産してしまった際には困ってしまいますね。そんな連鎖倒産の状況に直面した際に資金を貸付してくれる共済が、この中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)です。
こちらは昭和53年に発足しており、小規模企業共済と同じく政府系機関である中小機構が運営しており、平成28年3月時点で約40万件の在籍件数をほこっています。
掛け金月額は5,000円〜200,000円までの間で選ぶことができます。貸付条件に合致する状況に直面した場合に、50万円〜8,000万円の間まで借りることができますが、こちらも自分で設定した掛け金月額に左右されます。
年金
社会保険の部分で国民年金について触れましたが、国民年金以外にも老後の生活のために資金を準備する方法はあります。ここでは個人事業主の方が国民年金以外にも加入することができる年金制度について触れます。
1.国民年金基金
会社員の方は厚生年金として事業主と会社員の2者が支払っている(2階建て構造でいう2階部分にいる)ため、個人事業主の方よりも多く年金を支払っています。
そのため会社員であれば老後には個人事業主と比べてより多くの年金を受け取ることができます。しかし個人事業主だって、老後に備えてしっかり備えておきたいですよね。
そういった方におすすめなのが、国民年金基金です。国民年金基金を利用することで、個人事業主の方も会社員の厚生年金と同じように、国民年金に上乗せして年金を納めることができます。
加入するための条件は、以下の通りです。
日本国内に居住している20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、自由業、学生などの国民年金の第1号被保険者および60歳以上65歳未満の方や海外に居住されている方で国民年金の任意加入されている方が加入できます。
したがって次のような方は加入できません。
– 厚生年金保険に加入している会社員の方(国民年金の第2号被保険者)
– 厚生年金保険に加入している方の被扶養配偶者の方(国民年金の第3号被保険者)
国民年金の第1号被保険者であっても、次の方は加入できません。
– 国民年金の保険料を免除(一部免除・学生納付特例・納付猶予を含む)※されている方
– 農業者年金の被保険者の方
※平成26年4月以降、法定免除の方(障害基礎年金を受給されている方等)が「国民年金保険料免除期間納付申出書」を年金事務所に提出した場合、国民年金保険料の納付申出をした期間は加入することができます。引用元: 国民年金基金
また掛け金は、自分で選んだ「型」、加入している人の人数、加入時の年齢や性別などで決まります(上限は68,000円)。
国民年金基金が提供している「型」には地域型と職能型の2種類があり、どちらも内容に代わりはないのですが、事業母体が地域に根ざしたものか職能(業界)に基づいたものなのかという違いがあります。
また掛け金は全額、所得控除を受けることができるため税金を抑えることができるというメリットもあります。
2.個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人型確定拠出年金(iDeCo)とは、月々一定の掛け金を支払うことで年金を事前に積み立てることができる、金融機関が提供する金融商品のことを言います。
金融機関が加入者から集めた掛け金を運用し、60歳を超えた方に年金や一時金という形で受け取ることができます。
確定拠出年金教育協会によると、こちらの掛け金は5,000円以上〜6万8,000円となりますが、より細かい運用手数料などは金融機関によって異なります。
給付は老齢給付金、障害給付金、死亡一時金などがあり老齢時の年金だけでなく障害を被った際や死亡した際に保障を受けることができます。
こちらも国民年金基金と同じく、掛け金を全額所得控除にすることができるので、掛け金を支払うことで節税をすることができます。
3.付加保険料
個人事業主(第1号被保険者)の方であれば、社会保険料に追加で「付加保険料」を支払うことで、将来受給する年金額を増やすことができます。ただし付加できる保険料の金額は400円のみです。
日本年金機構によると、掛け金は400円ですが、受け取ることができる付加年金金額は、200円×納付月数となります。
40年間納付した場合、200×480(40年)=96,000円の納付をうけることができます。40年分の保険料の支払いを約2年間の給付年月で受け取ることができます。
400円で支払った掛け金を200円で受け取ることになるので、自分で貯金をした場合と比べて半分になってしまいますが、長期的に資金を少しずつ積み立てておきたい方に良いでしょう。
雇用保険

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労働者が失業した際に生活に困らないようにすることを目的としている雇用保険。会社員の方であれば当然のように入っている雇用保険も、個人事業主の方にとっては注意が必要になります。
1.自身の雇用保険
個人事業主の場合、文字どおり個人の事業主であって雇用されているわけではありませんので、雇用保険には加入することはできません。
個人事業主を廃業した際に資金を受けられるようにしたい方は、先述した小規模企業共済を利用することができます。また中小企業倒産防止共済を利用して連鎖倒産のリスクへの対策を取ることもできます。
2.従業員の雇用保険
雇用保険が個人事業主にとって問題になるのは、個人事業主が誰かを雇用したときです。
個人事業主であっても、アルバイトなど部下がいて、以下の条件に当てはまる場合は必ず雇用保険に加入し、雇用保険料を労働者と事業主の2者で合わせて支払わなければいけません。
・1週間の所定労働時間が20時間以上
・31日以上の雇用見込がある人を雇い入れている
引用元:人を雇うときのルール – 厚生労働省
労災保険

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労災保険とは、仕事が原因で何かしらの災害を被った際に国が保障してくれる保険です。業務中のケガや病気だけでなく、通勤中に事故などを起こした場合も労災の対象となります。
1.中小事業主等の特別加入制度
労災保険は原則として雇用保険と同じく、事業主が人を雇用した際に加入する義務が発生します。ただし個人事業主も、労災が起きたときには困ってしまいますね。
そんな個人事業主でも利用できる労災保険が、労災保険の特別加入制度です。
労災保険の特別加入制度とは、労働者向けの労災保険では当てはまらない個人事業主や、中小企業の経営役員など労働者と同じように労災保険の保障を受けたいという方々のための制度です。
申請時に希望の「給付基礎日額」を伝え、申請に応じて労働局が決定した「給付基礎日額」と保険料率をかけることで、掛け金が決定します。
2.従業員の労災保険
厚労省が公表しているように、雇用保険と同じように、個人事業主も従業員を雇った場合には労災保険に加入させる義務があります。
保険料は全額事業主側が負担し、労働者を1人でも雇えば、労災保険の適用対象となります。人を雇った場合には必ず労災保険の申請をするようにしましょう。
介護保険
老人の方のための福祉や医療の保障は、もともと介護保険ではカバーされておらず、老人医療費無料化など様々な方法で老人の方のための保障が行われてきました。
しかし従来の制度では増加する老人の方のニーズに対応することが難しくなってきたことや、核家族化などの社会の変化に対応するため、1997年に介護保険法が成立し、2,000年より介護保険法が施行されています。
ここでは個人事業主の方が知っておきたい、介護保険に関する内容を厚労省の資料をもとにお伝えします。
介護保険の仕組み
個人事業主の場合は市町村に年金からの天引きという形で介護保険を支払います。
その代わり、要介護認定を受けた場合には、訪問介護や通所介護などといった在宅介護サービス、定期巡回などといった 地域密着型の介護サービス、そして老人保険施設などの施設の介護サービスを1~2割負担で利用することができます。
個人事業主における介護保険
会社員の場合、介護保険は40歳〜64歳までの医療保険加入者が被保険者となります。つまり40歳以上で会社員であれば原則として介護保険を医療保険の保険料と合わせて、給与から徴収されます。
また受給要件は要介護状態・ 要支援状態で、かつリウマチなど加齢が原因の症状だった場合のみです。
個人事業主の場合、被保険者の対象者は65歳以上で、要介護状態もしくは要支援状態であることが受給要件となります。
保険料の徴収も、年金から天引きする形で市町村が徴収しますので、新しく何か申請をしなければいけないということはなく、国民年金を支払っていれば介護保険料も自動的に支払っていることになります。
平成27年〜平成29年における介護保険の基準額全国平均は、月額で5,514円でした。
保険料について
個人事業主になって驚くことの1つが、支払わなければいけない保険料や年金、税金が高くなるということです。
会社員であれば事業主が半分支払ってくれていた部分を、個人事業主は全額自分で支払わなければなかったりしますし、いくら税金を支払っているのかがより明確になったために税金が高くなったように感じる方が多いようです。
そんな保険料の支払いに関してここではお伝えします。
1.いくらぐらい払うのか
こちらでは、多くの個人事業主の方が当てはまる社会保険(国民年金と国民健康保険)の平均的な金額についてお伝えします。
a. 国民年金保険料
国民年金保険料は、ほぼ毎年月額に変更があるものの、一定の金額を支払うことが定められています。平成29年における第1号被保険者(個人事業主)の月額保険料は16,409円です。
b. 国民健康保険料
それでは、個人事業主として保険料はだいたいいくらぐらいになるのでしょうか?具体的な金額は各市町村が医療費水準を勘案して定めているため一律に言うことはできません。
厚生労働省による実態調査によると、平成27年度は上図の通り、1人あたり国民健康保険の保険料は年額58,500円〜78,300円でした。
よって、個人事業主として支払う健康保険料はだいたい年額6万円〜8万円くらい支払うものだと考えて良いでしょう。
国民年金保険が16,409円で国民健康保険の平均が約6~8万円と考えると、76,409円〜96,409円ほどが平均的な社会保険料であるといえます。
2.経費として仕訳できるか
国民年金や国民健康保険などの社会保険は、個人事業主の個人的な支払いとなるため原則として事業上の経費にすることはできません。
ただし、「事業主貸」という仕訳にすることで、事業主にお金を貸している形にすることは可能です。なお労働者を雇った場合は、従業員の健康保険料や年金保険料は「法定福利費」として帳簿します。
3.保険料を抑える方法

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a.青色申告で確定申告をする
居住地の市町村が定める国民健康保険料の算出方法によりますが、国民健康保険料の計算式の中には、前年度の総所得金額が必ず入ります。
総所得金額は個人事業主の場合 事業収入 – 経費 – 繰越純損失 – 基礎控除33万円 で決まりますが、青色申告を行うことでさらに65万円を控除することができ、税金だけでなく国民健康保険料も減額することができます。
保険料を抑えたい方は、まず青色申告をするようにしましょう。
b.法人化する
個人事業主として社会保険料を支払うよりも、法人化して法人として社会保険料を支払う方が保険料を抑えられる場合があります。
また厚生年金の方が国民年金よりも将来もらえる年金額は当然多くなりますので、将来的な年金額を加味して法人化するのも一つの手です。
保険金について
ここまで保険の内容と保険料に関して述べてきましたが、個人事業主の方が保険金を受け取るときに関して、こちらでは触れています。
1.社会保険の受け取りや仕訳
保険料を受け取る場合に関してですが、国民年金であれば65歳から受け取ることになります。60~64歳の時点でも申請をすれば年金を受け取ることはできますが、その分65歳以降に支給される金額は減ってしまいます。
年金自体は事業収入ではなく個人的な収入となりますので、申告の必要はありません。健康保険に関しては、普段から医療費が3割負担になっているため健康保険の保険金を受け取るといったことはありません。
2.損害保険や生命保険の受け取りや仕訳
個人事業主の方が損害保険など、何かの損害に対しての補償を受け取る際には原則として非課税になり申告は必要ありません(さんしょう)。
ただし生命保険が満期に達して戻って来た場合などは、一時所得として確定申告が必要になる場合があります。また死亡保険による保険金を受け取った場合には、課税の対象になるため申告の必要があります。
(参照元:保険金が入金されました。そのときの処理方法はどうしたらよいですか? | 弥生会計)
保険における個人事業主と会社員との違い
これまで様々なポイントをお伝えしましたが、つまるところ保険において、フリーランスの方と会社員の違いにはどのような点があげられるのでしょうか?
違い1.年金: 全額自己負担 vs. 自己負担 + 会社負担
個人事業主と会社員の違いの1つとしてお伝えできるのは、年金が個人事業主にとって全額自己負担になるのに対し、会社員は厚生年金である程度会社(事業主)に費用を負担してもらえるという点です。
上述した国民年金基金などを利用することで厚生年金と同様の年金額を引退後に受け取ることもできますが、その場合であっても半額誰かが負担してくれるというわけではなく、自分で基金のための月額費用を負担しなければいけません。
よって、年金自体は個人事業主の場合は全額自己負担であるということには変わりはありません。
違い2: 健康保険が高くなる場合が多い
企業で働いている場合は、健康保険は基本的に健康保険組合もしくは協会けんぽへ保険料を支払います。組合にもよりますが、国民健康保険の方が平均的な保険料率が高いため、保険料が高くなる場合が会社員に比べて多いと言えます。
先述したように、青色申告や加入できる健康保険組合に加入するなどといったことを通じて健康保険料を減らすようにすることができます。
違い3: 雇用保険や労災保険は自分から保障を”取り”に行かなければいけない
雇用保険や労災保険などは会社員であれば事業主が負担しているため、失業したり労災が起きたりしたときに保険による保障があります。
個人事業主の場合、労災は特別加入制度、共済には小規模企業共済・セーフティ共済などを自身から利用しないか限り、失業時や労災時に保障を受けることができません。
違い4: (節税や保険料減額のため)収入と支出を複式簿記で記帳しなければいけない
個人事業主は青色申告を通じて、国民健康保険料を減らすだけでなく節税もすることができます。 青色申告のためには月々の事業収入と事業支出を複式簿記形式で記帳しておき、青色申告として確定申告する必要があります。
会社員のときには給料日と何にお金を使うか記帳をしていない方も多いと思いますが、個人事業主の方は節約のために記帳をする必要があります。
最後に
個人事業主の保険について触れて来ましたが、いかがでしたか?個人事業主になった頃はお客様を見つけることだけでも大変なのに、保険や税金など新しいことがたくさんあって大変ですよね。
本記事を参考に、自分にあった最適な保障を最適な保険料で 受けるようにしてみてくださいね。
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