06/29/2022

アスベストの調査や除去にはいくらかかる?費用の目安を解説

有害な物質であることがメディアでも多く取り上げられているアスベスト。もし自宅にアスベストが使われている場合、正しい方法でアスベストを取り除かなければいけません。ここでは、アスベストの危険性や調査・除去にかかる費用などを詳しく解説していきます。アスベストの調査・除去に関して分かりやすく紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

目次


アスベストとは

アスベスト(石綿)とは天然鉱石の一種であり、繊維状ケイ酸​塩鉱物の総称を指します。その細さは直径40ナノメートル以下と、非常に細かいのが特徴的。代表的な性質として、以下のようなものが挙げられます。

・引っ張ったり曲げたりしても切れにくい
・熱に強い
・摩擦によってすり減りにくい
・アルカリや酸に強い
・電気を通しにくい
・熱を通しにくい
・音を通しにくい

このようにアスベストはその丈夫さから通常の環境では分解されにくく、放置していても変化しにくい特性があります。この特性を利用し、一般住宅の建材や自動車部品、家庭用品など様々な用途で使用されてきました。また、優れた特性から「奇跡の鉱物」とも呼ばれていたようです。


アスベストを除去しなければいけない理由

どうして「奇跡の鉱物」とまで言われていたアスベストが除去の対象になってしまったのでしょうか。

その理由は、アスベストが 石綿肺(じん肺の一種)、肺がん、悪性中皮腫などの原因になることが発覚したからです。アスベストは非常に細かい繊維質なため空気中に漂いやすく、目では確認できません。

そのため容易に体内へ取り込まれてしまい、体内のアスベストが肺に達すると上記のような健康被害をもたらします。 また、さらに厄介なのは潜伏期間の長さ。

例えば、中皮腫は平均35年前後もの潜伏期間の後発病することが多く、アスベストを吸い込んでから病気を発症するまでに、約15〜40年の潜伏期間があると言われています。そのため、知らないうちに健康被害を受けているのがアスベストの怖いところでしょう。

(出典:国土交通省、アスベスト対策Q&A、2022年6月現時点情報。詳しくは直接サイトをお調べください。)


アスベストのレベル分類

アスベストは発塵性(飛散性)によって作業レベルが定められており、レベルの数が小さいほど発塵性が高く危険とされています。作業レベルによって必要な対策や手続きも異なるため、アスベストを除去する際は、まず作業レベルを判断する必要があります。以下では、作業レベルごとの内容について説明します。


レベル1:発塵性が著しく高い

最も飛散の危険が高いとされるレベルで、「石綿含有吹付け材」と呼ばれるアスベストを吹き付けた建材が該当します。耐火性や防音性の向上を目的に、天井・壁・柱などへアスベストが吹き付けられている建物はレベル1となるでしょう。

レベル1では発塵量が著しく多いため、高濃度のアスベストにも対応できる防塵マスクや保護衣を着用が必須。作業場所を隔離・養生もしなければいけません。

なお、事前調査後は「工事計画届出」と「建築物解体等作業届」を労働基準監督署長に、「特定粉じん排出等作業届出書」と「事前届出」を都道府県知事に提出するよう義務付けられています。また、洗身室と更衣室を併設した前室の設置も必要です。


レベル2:発塵性が高い

レベル1に比べると発塵性は下がるものの、除去作業や解体作業を行う際は十分に注意しなければならないでしょう。アスペクトを含むシート状の保温材・耐火被覆材・断熱材が該当し、これらは空調ダクトやボイラー、煙突などで使われています。

レベル2の作業を実施する場合も、作業員の防塵マスク・保護衣着用や、作業場所の隔離・養生が必要です。また、労働基準監督署長・都道府県知事への事前届出や、前室の設置も必須事項のひとつ。ただし、レベル1と違い、労働基準監督署長宛ての工事計画届出を提出する必要はありません。


レベル3:発塵性が比較的低い

最も飛散の可能性が低いとされているレベル。レベル1・2以外の建材が該当し、天井・壁・床の成形板、ビニル床タイルや、屋根材などが例として挙げられます。

これらの建材はセメント・樹脂で固められているため割れにくく、飛散のリスクはかなり低いでしょう。手作業が中心ですが、破砕や切断作業ではアスベストが飛散しやすく、飛散抑制のため湿潤化を行ってから作業しなければいけません。

レベル3の作業は発塵性が最も低いものの、防塵マスクや保護衣での安全対策は必須ですが、劣化度合いにもよっては、前室設置や作業場所の隔離は義務付けられていません。

また、2022年4月以降、石綿の有無に関わらず作業規模によっては事前調査結果の都道府県知事及び労働基準監督署への報告が義務付けられているので注意が必要です。

出典:環境省、建築物等の解体等における飛散防止対策

   厚生労働省、石綿を含有する建築物の解体等に係る届出について

※2022年6月現時点情報。詳しくは直接サイトをお調べください。


アスベスト調査とは

アスベスト調査 とは、建物の解体・改修時や不動産取引に出す場合に必要とされるアスベストの有無を確認するための調査のこと。調査によってアスベストが確認された場合、アスベストの飛散防止対策をとらなければいけません。

特に、建物の解体時はアスベスト調査が義務付けられているため、できるだけ早いタイミングで調査するようにしましょう。 アスベスト調査では、建物の建材をサンプルとして採取し、成分を分析してアスベストの有無を確認します。

アスベストの有無や種類を調べる「定性分析」と、アスベストの含有率を調べる「定量分析」があり、目的に応じて片方あるいは両方を依頼するようにしましょう。また、天井裏や壁裏などを確認する際にアスベストにさらされる危険があるため、必ず専門家へ依頼するようにしてください。


アスベスト調査の費用相場

アスベストの分析にかかる費用相場は、定性分析の場合は2.5〜5.0万円程度、定性・定量分析の場合は4.5〜8.0万円程度が目安。サンプル数が多い場合や、細かく分析・報告する場合は費用が高くなるでしょう。

また、これらはあくまでも分析費用であり、現地でのサンプル採取や図面調査を依頼すると別途費用がかかります。分析以外の費用も含めると、場合によっては10万円以上かかることもあるため注意してください。


アスベスト調査の補助金について

アスベスト調査には、国土交通が補助金制度を創設しています。そのため、補助金制度がある地方公共団体では、補助金を受けることができます。しかし、 補助金制度がない 県や市もあるため、事前にお住まいの地方公共団体に問い合わせましょう。

補助金の対象となるアスベストは、吹付けアスベストとアスベスト含有吹付けロックウール。

  • 対象建築物:吹付けアスベスト等が施工されている可能性のある建物
  • 補助内容:吹付け建材中のアスベストの有無を調べる調査費用
  • 補助額:限度額は原則として25万円/棟

(出典:厚生労働省、石綿総合ポータルサイト、2022年6月現時点情報。詳しくは直接サイトをお調べください。)


アスベスト除去とは

現在、アスベストを使用した住宅の解体工事を行う際は、使われているアスベストを事前に除去するよう義務付けられています。アスベストが使われた住宅に住んでいるだけの場合、健康被害を受けることはほとんどないでしょう。

アスベストが最も飛散しやすいのは、住宅を解体するとき。住宅を解体する際、適切な方法で除去しないとアスベストが周囲に飛散し、工事業者や近隣に住む住民の健康が危ぶまれることになります。

なお、解体工事だけでなく改修・修繕工事を行う場合も、除去作業や囲い込み・封じ込め作業などで飛散防止の対策をしなければいけません。 また、住宅の劣化が激しい場合もアスベストが飛散する可能性があります。自宅の工事を予定していない場合でも、住宅の劣化によってアスベストが飛散する前に、できるだけアスベスト除去や飛散防止の対策をとった方が良いでしょう。


アスベスト対策に有効な3つの方法

アスベストでも、断熱材や保温材、成形板など原型のまま取り外したり切断したりして除去できるものは飛散のリスクが低くなっています。

しかし、レベル1に該当する石綿含有吹付け材は飛散リスクが高いため、特別な方法でアスベスト対策を行わなければいけません。石綿含有吹付け材の対策方法として、具体的に「除去工法」「封じ込め工法」「囲い込み工法」の3つが挙げられます。それぞれの詳しい内容について、以下で確認していきましょう。


除去工法

下地から石綿含有吹付け材の層を除去するという工法で、アスベストを完全に取り除くことが可能です。地震で建物が倒壊したときや、建物の劣化が進んでいる場合でも飛散の心配がなくなるため、3つの工法の中では最も推奨されています。

工事費用は高つきますが、今後建物を解体・改修する場合のアスベスト対策が不要になる分、トータルコストは安く済むでしょう。また、工事後の定期点検も必要ありません。最も安全かつ、アスベスト対策にかかるコストを抑えられる工法です。


封じ込め工法

除去工法と異なり、アスベストを除去するのではなく残したまま飛散のリスクを低くするという工法。具体的に、石綿含有吹付け材へ薬剤を染み込ませたり造膜材を散布したりして表層部を覆い、アスベストの飛散を防ぎます。除去工法と比べ、工期が短いことや工事費用の安さ、工事による飛散リスクの低さがメリットでしょう。

ただし、建物の解体・改修時は改めて除去工事が必要となります。また、工事箇所の破損や剥離がないかをチェックする定期点検も行わなければいけません。そのため、工事費用は安く済むものの、結果としてトータルコストは高くなってしまうでしょう。


囲い込み工法

封じ込め工法と同様、アスベストを残したままで飛散のリスクを抑える工法。石綿含有吹付け材の層を板状の建材で完全に覆い、アスベストの飛散や石綿含有吹付け材の損傷を防ぎます。こちらも除去工法と比べて工事費用は安く、工期も短いことがメリットです。

しかし、建物を解体・改修する際は除去工事が必要な上、工事後の定期点検も行わなければいけません。一時的な対策としては有効なものの、長い目で見ると、アスベスト対策にかかるトータルコストは高くなってしまうでしょう。


アスベスト除去の費用相場

アスベスト除去にかかる費用相場として、国土交通省が処理面積別(1m²あたり)で公表しているものが以下の表です。

ただし、これは2007年1~12月の施工実績データを基に算出されたものです。作業レベルや作業箇所などによって費用は大きく変わってくるため注意してください。

作業レベルと作業箇所別に費用の目安は、以下のようになっています。なお、レベル1〜2に該当する建物全体のアスベストを除去する場合は数百万円かかることもあるため、業者とよく相談するようにしましょう。


アスベスト除去の補助金

民間建築物に対するアスベスト除去、または囲い込み工法、封じ込め工法に関して 除去に関しても、補助金制度のある地方公共団体にお住いの場合は、国からの補助金を受けることができます。

補助対象とする石綿(アスベスト)は、吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール。

  • 対象建築物:吹付けアスベスト等が使用されている建物
  • 補助内容:所有者等が行う吹付けアスベスト等の除去、封じ込めまたは囲い込みに要する費用
  • 補助率: 地方公共団体の補助額の1/2以内(かつ全体の1/3以内)

(出典: 厚生労働省、石綿総合ポータルサイト、2022年6月現時点情報。詳しくは直接サイトをお調べください。 )


アスベストの有無をチェックする目安

アスベストに関する歴史を辿りながら建物の建築時期を確認することで、アスベストの有無はある程度判断ができます。

アスベストの規制が始まったのは、昭和50年(1975年)。昭和62年(1987年)になると、レベル1に該当する石綿含有吹き付け材の使用が禁止されました。平成16年(2004年)には、アスベストを含んだ建材の製造や輸入・使用が禁止されるようになりました。

平成18年(2006年)にはアスベストが重量の0.1%を超える製品の輸入・製造などが全面禁止。令和2年(2020年)になって、 規制対象が 含有量に関わらずすべてのアスベストを含む建材に拡大されました。

昭和50年(1975年)昭和62年(1987年)平成16年(2004年)平成18年(2006年)令和2年(2020年)
アスベスト含有量が5%以上の吹き付け作業禁止石綿含有吹き付け材の使用が禁止 アスベスト含有量1%を超える建材の製造が禁止アスベスト含有量0.1%を超える建材の輸入・使用・製造が禁止 規制対象をレベル3を含むすべてのアスベストを含む建材へ拡大

これらをまとめると、建築時期とアスベスト有無には関係性があると言えるでしょう。昭和50年以前は規制がなかったため、それ以前に建てられた建物にはアスベストが含まれている可能性が非常に高いです。

規制ができたとはいえ、2006年以前に建てられた建物はアスベストを含んだ建材を使用している可能性があるため、一度調査してもらうと安心です。


アスベストの調査や除去を依頼するときの注意点

専門資格を所持しているか

アスベストを使用した建築物の解体、改修、リフォームなど行う際に特別な資格は必要ありません。ただし、アスベストの調査や除去は専門家でなければ適切な取り扱いが困難であるため、資格の有無を確認するようにしましょう。

<アスベスト調査に関する資格>
・建築物石綿含有建材調査者(アスベストだけでなく建築物の調査についても熟知しており、中立的な立場から精度の高い調査・報告ができる)


<アスベスト除去に関する資格>
・石綿作業主任者または特定化学物質等作業主任者(アスベストによる健康被害防止のための指揮・監督・管理を行う)
・作業環境測定士(アスベストの測定・分析を行う)
・特別管理産業廃棄物管理責任者(アスベスト処理工事によって生じた産業廃棄物を適切に管理する)
・産業廃棄物収集運搬許可(産業廃棄物の収集・運搬を行える)


規則に則って工事を行っているか

アスベスト処理工事の事業者は、石綿障害予防規則や廃棄物処理法によって定められた以下の項目を守る必要があります。

1. 石綿作業主任者の選任
2. 労働者全員に、石綿障害予防規則で定めるアスベストの特別教育を実施
3. 特別管理産業廃棄物管理責任者の任命(レベル1・2の場合)
4. 半年に1度、労働者全員へアスベストの特殊健康診断を実施

依頼する業者が以上の項目を守っているかどうか、しっかり確認するようにしましょう。


しっかり調査をしているか

アスベストのサンプルを採取してから分析結果が出るまでは、一般に1〜2週間程度が必要です。しかし、中にはあまりにも調査時間が短いという業者もいます。そのような業者はずさんな調査を行なっている可能性が高く、調査内容を確認した方がいいでしょう。


ゼヒトモからアスベストの調査や除去を依頼する

今回は、アスベスト調査や除去について詳しく解説しました。規制やルールが多く、一人で行うには時間も手間もかかるもの。アスベストの有無がわからず不安な方や、自宅のアスベストを取り除きたい方は、ゼヒトモからアスベスト調査・除去の依頼を出してみませんか。

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